トリップ

前回、さえない連休だったので何をしたかほぼ覚えてない・・と書いたんだけども、家にある漫画とか図書館本とかを読んでたのだった。脳内でのトリップというやつです。

息子と一緒に読み始めたのがこれ。

「マスターキートン」。学生時代、世界一かっこいい男はと問われたら、迷わず平賀キートン太一と答えていただろう・・・その後も長いこと(旦那さんが現れるまで、と言っておこう)一位であった。

(・・・うわっ。さっきDMMブックスのCMで、彼氏に向かって「私ほかに好きな人ができたの!安室さん♡」とか言い出した女に思わず「アホか」ってつぶやいたの、今ブーメランになって返ってきたわ。後頭部にぐっさり刺さった。たはは。)。

ともかく、見た目はそううだつの上がる感じでもないが、強く賢く、心優しいキートンさん。主にヨーロッパを舞台に、考古学者であり、特殊部隊出身の保険調査員として活躍するので、西洋史やヨーロッパの地理・政治に関する知識が自然に入ってくる・・・

はずなのだが、息子氏は結構な速さで2〜3冊読み終わり「SAS出身ってすげえな!」とだけ言っていたので、どうやらあまり詳細には読んでいなさそうだ。サバイバル技術の部分に心惹かれたらしい。

しょうがない、吹き出しが文字だらけだもんな。たぶん、3割くらいしか理解してないな。そもそも、昔ドイツが東西に分かれてたこととか知ってるのかね。知らんだろうな。

でも、私が初めて手に取ったのも確か中学生くらいの時だったけど(ビッグコミックオリジナルに連載されていたと思う)、そのあと大学生になって古本屋をめぐって買い集めて2回目を読んだ時、社会人になってから読んだ時、毎回違う発見があった。この本には、年齢を経てやっと理解できるようになった事柄がたくさん入っているのだ。

だから、これは息子氏にとって、記念すべき一回目だ。いつでも母の本棚はひらかれているぜ!


ちなみに、これとどっちを先に手渡すか迷ったのよね。

「大使閣下の料理人」。どっちもプロフェッショナルですな。お仕事漫画。

どっちを渡そうかな、と思って一巻をパラパラとめくった際、そう露骨ではないが女性が乱暴されるシーンがあったので、結局キートンを先にすることにした。が、そっちも2巻以降にはなんやかんやでそういう描写が全くないわけではなかった・・。まあ、もう中2なのだし、そのへんは推して知るべし。

どっちもおっさん対象の青年誌に連載されてたからしょうがない。が、はっきりした主題があってお色気は二の次なので、そういう描写はライトな方ではある。さほど気になる程でもない。

キートンの方が断然古いのだけど、大使閣下の方が男尊女卑的描写が濃いのは、メインとなる舞台がアジアだからだろうか、それとも料理人ってのはそういう世界なのか。連載時は00年代だったはずだが、今読むとかなり違和感がある。長いことモーニングなんて買ってないから、今もそういう傾向の雑誌かもしれないけどな。

ベトナムの日本大使館公邸で料理人として働く才能あふれる主人公が、大使とタッグを組んで食卓外交に一役買う・・みたいな話ですね。実名ではないにしても、実在の人物をモデルにしたキャラや事柄がたくさん出てくるし、現在に連なるちょっと前の国際政治情勢を把握するのにいいかもしれない。キートンのそれは、もうひと時代前、ふた時代前という感じ。

数年前に櫻井翔で2時間ドラマ化されてたと思うけど、あれはなんというか、すごい内容が薄かった。翔さんのせいではないが、がっかりしたのを覚えている。

文庫全13巻のうち、9巻、12巻、13巻だけが手元にない。読んだことはあるはずなのだが。。

8巻がN国(北朝鮮)で冷麺の製法を見せてくれと頼んで相手を怒らせ、スパイ容疑をかけられてそうな場面で終わってたもんで、ハラハラしつつ10巻の冒頭を見たら、もうフランスのエリゼ宮にいた。いったいどうやってN国から脱出したんだよ!


次は図書館本。

朝井まかて「輪舞曲」。伝説の舞台女優・伊沢蘭奢をめぐる3人の男が、彼女亡き後、それぞれに在りし日の彼女との恋を思う。こういう、同じ人間のことを別の人間の視点(三人称小説なので、実際は神の視点なんだけど)から描くような本は好きだ。

少し前に読んだ、東京に神宮を造営する「落葉」とほぼ同時代の話だと思うけど、こちらの方が読みやすかった。朝井まかての本は、時代感がはっきりするように作り込まれているというか・・同じようなものが一つもない。読み応えがある。とっつきにくいのもあるんだけど、引き込まれるとどっぷり浸れる。読んだ後だいぶ疲れる。

次のは、落葉、輪舞曲よりだいぶ読みやすい。

「銀の猫」。江戸時代にも、現代でいう介護士やヘルパーに当たる仕事が存在したんですな。

嫁ぎ先でいじめ抜かれた末に離縁され、介抱人専門の口入れ屋に登録し、派遣先の家で老人介護をする女が主人公。朝井まかてが書くだけあって、量産型のかる〜い時代小説とはひと味違う(とか言ってるけど、量産型も別の良さがあって大好き)。

介抱人は、普通の女中奉公より大変な分、だいぶ金がいい。金がいるのは、離縁された元婚家に借金があり、早くそれを返してしまいたいから。しかもその金は、妾奉公しか勤めをしたことがない毒親の母が勝手に婚家から借りてきたもので、分割で毎回元旦那(冷たい上に不誠実で、すぐ次の嫁を取りもう子まで成したのに、今度は主人公を妾にしようと目論んでいる。めっちゃ嫌な男)に手渡しで返さねばならない。

そのために日々身を粉にして働き蓄えている金なのに、何度隠しても毒親に見つかって勝手に使われてしまう・・という悲惨な主人公。親子って何だろうかと考えてしまう。

まあ、そんな主人公の親子関係もありつつ。子だから老いた親の面倒を見るのが当たり前、他人に介護をさせるのは人道に悖る(特に侍の家は厳しく、跡継ぎの男が両親を看なければならない)とされていたこの時代だけど、綺麗事では済まないのは現代と一緒。どの家もその家なりの難しさがある中に、思いやりを持って入っていき、老人の信頼を得ていく主人公。めっちゃいい子やで!ホンマ。

さて、あんまり量産型とか言っちゃいけない。と言いつつ、その手のライトなやつを。

「はなの味ごよみ」。みをつくし以降(もはやあれはエポック)、この手の料理人ものめっちゃ多いので、つい最近まで避けてたかも。結局みをつくしが一番面白いし、長くなりすぎず仕舞ったところまで含めて完璧だったからなあ・・・。

しかし、楽天ブックスだったかアマゾンだったかの、検索や読書の傾向によるとあなたにはこれがおすすめですみたいな(余計なお世話)表示の中にあったものを、気が向いたので図書館で取り寄せることに。初めて読む作家さん。

主人公は、鎌倉の農家に独り住いしていた天涯孤独の大食らい女。大食らいなので嫁に行き遅れていたのだけど、ある時、家に帰ると旅装の男が飯を作って待っていた。驚いたが、成り行きでしばらく家に泊めることになり、寝食を共にしているうちに心通い合い、夫婦となる。

しかし幸せな時は長く続かず、ある時男は、女が食べてみたいと言っていた立派な鎌倉エビ(高価)と別れの手紙を置いて、いなくなってしまう。打ちひしがれつつ、泣きながら立派なエビを七輪で焼き、うまいうまいと食べる主人公。食べ終わった女は、江戸に出て夫を探し出すと決意し、一人旅立つのであった・・・なんだか冗談みたいな始まりだけど、まあこういう感じの話です。

江戸に出た女は、色々な縁あって、旦那と死別した女将が一人で切り盛りする料理屋に身を寄せることになり、そこで働きながら夫だった男を探すというわけ。多少とっぴな感じが面白いといえば面白い。いま4冊くらい読んだのだけど、それ以降はまだ取り寄せができないのよね〜。

さっさと続きを読まないと、シリーズの存在自体を忘れそう。そういう量産型時代小説の連作がたくさんあり、脳内に中途半端な形で記録も残さず途絶えたまんまになっていて、忘れてまた同じのを取り寄せようとしたりする。・・せっかくこのブログもあることだし、これからはちゃんとメモしよう。

さて、おすすめリストでこの本の隣に出てきたのがこちら。

「お江戸やすらぎ飯」。これも初めての作家さん。

えーこの本の主人公は・・たしか(どの本もとっくに図書館に返したもんで記憶がいい加減)、火事で両親と死に別れ、幼いのに天涯孤独になったところを女郎屋の主人に拾われ、見た目が可愛かったんで将来女郎になる前提で養女になり、まだ店に出される年齢ではないので遊女たちの食事の切り盛りをしている、という設定だったと思う。

この子には天性の特殊能力があって、なんと相手を見るだけで、その人の体がいま欲している食材を察知し、調理することができるのである!いわゆる超能力に近いものという描写です。

せっかくそういう能力があり、本当はいつまでもそうやって料理で人を助ける仕事をしていたい・・のだけど、拾われた恩を仇で返すわけにもいかず、もうすぐ女郎になる日がやってくる。しかし、まああれこれあって知り合ったえらいお医者さんたちに見込まれて、このまま女郎になるか、診療所に修行に出て、今でいう栄養士としての勉強をするか・・という局面に。

まあ気になったら続きは読んでください。こちらは、薬学とか栄養学的な側面が強いです。

最後はこちら。

篠綾子「小烏神社奇譚」シリーズ。

この作者の本は図書館で見かけることが多いので、これまでに何作か読んだことがある。エンタメとして普通に面白い、一定のクオリティのものを作っては終わらせてる印象。

「更紗屋おりん雛形帖」「江戸菓子舗照月堂」「絵草紙屋万葉堂」「代筆屋おいち」などのお店ものが多い。だいたい親のいない若い女の子が主人公で、これと志した仕事の道を頑張りつつ愛だの恋だのもあって・・困難にぶつかりつつがんばる、みたいな読みやすい感じのやつ。全部。でもシリーズ物以外読んだことないから、もしかしたらそうじゃないのもあるかも。

このシリーズは珍しく主人公たちが男性で、小烏神社で宮司をしている無愛想な男(生まれながらに強い力を持ち、古剣の付喪神であるカラスと蛇に育てられた・・ややこしいな)と、人に優しく金のない本草学者の2人。バディものと言えばいいのか、奇譚ものと言えばいいのか・・ともかく、謎解きの要素があるからミステリでいいのかね。ファンタジー系の。

ジャンルでいうと宮部みゆきの「三島屋変調百物語」とか畠中恵の「しゃばけ」とかに近いのかもしれないが、そこまで面白くなる予感はないなあ・・・まあ、読書メモということで。

続きがあったら読むけど、それよりはまだ完結してない(というか、順番待ちが長くて途中で放り出してる)「江戸菓子舗照月堂」の方が気になるかな。


どの本もそれなりに面白かったですよ。個人的な感想メモです。知らんけど(←これ大事。一冊一冊をしっかり妥当に評価できるほど、ご大層な読書家でもないんでね)。


ってことで、押しピンはお休み。


チェリーハイツ

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