ヌックですぞ

ポケットカイロがマイブームの息子氏。

しばらく前からよく持ち歩いている。昔はそんなに寒がりじゃなかったのに、最近ぬくもりが恋しいみたい。


北風がぴゅうぴゅう吹く中歩いていると、珍しく自分から手を繋いで来ようとするので、ママの手ぬくい?と聞いたら、「ヌックですぞ〜。」という返事が返ってきた…

じわる。

じょじょにジワジワときて、ツボに入ってから爆笑3分間。


それからというもの、ついつい期待して聞いてしまう。
「ここ寒くない?大丈夫?」
「ヌックですぞ。」
「上着着なくていいの?冷えない?」
「いやいや、ヌックですぞ。」
「ほっぺ冷たいね(手で包んでやる)」
「ややっ、これは…ヌックですぞ!」

実はさっきまで三日間大阪にいたのだが、滞在中ずっとそんな感じだった。


今回の帰省の主たる目的は、法事。父方の祖母の三十三回忌なので、来た日と中日は大阪市内の旦那さんの実家に滞在し、今日は朝早く出て南に向かい、私の実家で法要だった。


全くの偶然なのだが、32年前に亡くなったその祖母というのが肺癌で倒れた時、入院して手術をした病院というのが、うちの旦那さんの実家のすぐそばにある。結婚する前に初めて旦那さんの実家に行った時、ああここに来たことがあると思ったのだ。



もう今は大きな廃墟と化しているようだが、昔はここに病院があった。

小学生になったばかりの頃に祖母は家を出てここに入ったのだけど、その時にはもう手の施しようがなく、多少の延命のための手術をし、胸から背中へ体を半周する大きな傷を作って帰ってきた。

でも、そんなことは知らなかったから、家から電車で何十分もかかる遠くの街の病院から自分のそばに帰ってきてくれて、ただただ嬉しかったのだ。

それからすぐに、近所の病院に入って数ヶ月過ごしたあと、寒い寒い冬の日に亡くなった。

祖母が死んだ時のことを思い出すと、その日の寒さも一緒に呼び覚まされる感じがする。


今朝は早起きして身支度をし、黒いワンピースにコートを羽織って、この病院の前を歩いた。ただでさえ早朝で寒いのに、ワンピースの生地が薄いので余計に寒い。

寒い寒いと言っていたら、息子氏が手を握ってきた。ポケットカイロを握っていたらしく、温かかった。ヌックですなあ、と笑う。


昔ママはおばあちゃんと一緒に寝ていたんだけど、ある時病気でこの病院に入って、でも治らなくて亡くなったのよ。まだ小さかったから、ずっと一緒だったのに突然ヌックじゃなくなって、寂しかったなあ・・・なんて話していたら、息子氏が手をギュッとしてくれた。

「ヌックですぞ!」


そうだな。

いや〜、ヌックって、本当にいいもんですね。



0コメント

  • 1000 / 1000