長いお別れ

面白おかしい押しピンだけを脳に刺して暮らしたいとは思うが、なかなかそうはいかない。




こないだまで、我が推し丸山さん主演の時代劇を見るために、2か月だけWOWOWと契約していた。貧乏性なのでその間いろんな映画を見たんだけど、そういえば最後の方に「長いお別れ」も見たんだった。きょう思い出した。

始まってから気づいたので冒頭10分くらい見逃したんだけど、いい映画だ。山崎努が認知症でどんどんいろんなことを忘れていくお父さんの役で、お母さんは松原智恵子、娘の姉妹を竹内結子と蒼井優が演じていたんだった。中村倫也もちょっと嫌なかんじの役で出てたな。

基本舞台が日本なわけだし、やっぱりシーンの多い妹役の蒼井優が良かったんだけど。アメリカで暮らしてる姉役の竹内結子が、息子や夫との不和に悩んで精神的に追い詰められて、スカイプで病室のお父さんに悩みを吐露するシーンがあって、それがものすごく胸に迫ったのだ。

もう満足な受け答えすらできないし、わかっているのかどうかあやしい、画面の向こうよりももっと遠い遠いところにいるお父さんに・・・一緒に泣きそうになってしまった。

ちゃんと育ててきたつもりの息子の不登校に悩んで、理解したいと思っているのに寄り添うことができなくて、夫ともあまり心が通わず、言葉の通じない外国で周りに馴染めなくて、大切な家族が壊れてしまいそうなのに、誰にも頼れない。母であり妻であり、いい大人のはずの自分を一瞬脱ぎ捨てて、娘に戻ってお父さんに縋る、その心細さの表現がすごかった。

見ていてたまらなかった。ほかのパートよりも年齢や立場が自分と近い分、やはり見ていてそこに共感してしまったんだと思う。いい場面だった。

あと、たぶんそこがハイライトなんだと思うけども、遊園地のメリーゴーラウンドのシーンも良かった。公開当時、なんどもラジオCMで聞いた「おとうさーん」と呼びかける声は、あの場面のものだったんだな。ラジオで聞いても、ちゃんと蒼井優と竹内結子の声だって判別できた。


女優として何かを演じている竹内結子を見たのは、あれが最後だったことになる。その前にコンフィデンスマンの前作もテレビで見たな。あの時、三浦春馬はもういなかった。

今月に入ってから、サッポロ一番を何か別の食べ方にアレンジするイベントみたいなのや、LEEの表紙とインタビューも見たけども、女優として何か別の役を演じていたわけではないから(それは正直どうだかわからないけど)。

綺麗なひとだと思っていたし、ずっと好きな女優さんだった。他の作品名を挙げるときりがない。きっと、みんなそうでしょう。

今月号のLEEに、40歳の地図という特集で表紙と巻頭に載っていたのを見た人もたくさんいると思う。80年生まれだから、自分と同い年だ。年の近い有名人はと聞かれたら、男性なら桐谷健太、女性なら竹内結子だなあと思う。若い頃から見ている名優であると同時に、母であり、妻である人だった。

前回のブログでも書いたように、ここしばらく大量の雑誌を処分しまくっていたのだけど、彼女はずっとLEEに載っていた。文化面にも広告にも載り、表紙だって何回も飾っていたから、きっとここを読んでくれている人にとっても、他の人より身近な存在なんじゃないかと思う。

少なくとも自分は、若い男の子や独身の女優が死んだって時とは、ちょっと違う種類のショックに襲われてる。

いったいどうして、と思うけれども、そもそもそんな個人的なことについて、わかりやすい答えを得ようとすること自体が間違っている。それでも衝撃のあまり、頭の中は疑問符だらけになってしまうのはもう、しょうがないだろう。



どんなに可愛い服を着て、素敵なポーズで微笑んで、明るく家族への愛を語り、将来の展望を話していても、そのあとすぐ死ぬのだ。ひどい話だ。こんなひどい話あるか?



三浦春馬が亡くなってからもう2か月経つけども、そのあと色々考えた。

ことがあった直後に、このブログに「私を離さないで」のことを書いたからだと思うんだけど、彼のファンの人(知人ではない)から数回、SNSあてにメッセージをいただいた。大切な存在が突然消えてしまって動揺している様子だったし、明らかに度を失っている様子だった。

それからも気にはなっていたのだけど、私にも推しがいるわけで(最近濃厚接触者として自宅待機になっているが元気らしい)、色々考えてしまい、簡単に返答ができなかった。相当しんどかった。

ある日推しの人が突然死んでしまったら、自分だってかなり動揺するし、少しでもわかってくれそうな人に縋ってしまうかもしれないし、思った反応が得られないことで、ものすごく傷ついてしまうかもしれない。だから、自分がかけてもいい言葉なんて、本当はないのだ。


そうこうしてる間に、彼が生前に遺した作品が次々と公になった。歌番組ではMVが公開されたし、NHKのスペシャルドラマも放送され、世界は欲しいモノにあふれてるの総集編まで、順に放送された。最初は、彼が頑張って遺したものがちゃんと放送されて良かったな、と思っていたのだけど。

見ているうちに、だんだん自分の心に変化が起きてきた。せかほしの最後の放送の頃には、完全に様子が変わってしまっていた。


「でもこの後死ぬんだよな」って毎回思ってしまうのだ。これって結構しんどくないか。


自分で購入して育てていこうとしていたという、その漆器はあれからどうしたんだろう、と考えてしまう。家族も友達も、食器も石も指輪も、生きているあいだ暮らしの中で持っていたどんなものも、彼をこの世に引き留める何かにはならなかったのだ。ただただ全てが空しいと思った。


そのあと、こうやって遺作を大々的に放送するのが本当にいいことなのかどうか、わからなくなってしまった。せかほしまではまだいい。太陽の子も見たし、映画だって完成しているものならばきっと見ると思う。

でも、不完全なままで終わったドラマを無理くり短く編集してまでなんとか放送するのって、いったいどうなんだ。しかも本当に死の直前まで撮っていたとわかっているのに、疑問符なしで見られるわけがない。

大勢の脳内が、真っ黒で恐ろしくばかでかい、大きな「?」で一杯になるのではないかと思うんだが、普通にこういう枠で放送してしまうんだな、と思った。怖い。


芦名星のことだって、相棒マニアとしては本当に辛い話だったけど、ここにはあえて何も書かなかった。もうこれ以上、それに触れてはいけない気がしたのだ。

だって、何を見たって毎回きっとそう思ってしまうんだもの。こんな明るくて元気で、魅力的な笑顔で綺麗なのに、このあとたったひとりで、みんな遺して突然死ぬんだよなって。


最近夏クールが終わって、新しいドラマが始まるタイミングだから、いろんな俳優さんが、普段出ないようなバラエティに番宣で出てくる。そつなくいろんなクイズやゲームに挑戦して、これから始まるドラマのお知らせをしてくれる。

でも、この人だって突然死ぬかもしれないと思って見ている自分がいる。めちゃくちゃ悩んでるかもしれないし、鬱かもしれないし、追い詰められて限界近いのに、明るく告知しているんじゃないかと疑ってしまう。

そのことに気づいて、なんて不健康なんだ!と思った。もう言ってしまった方が自分の精神衛生上良さそうな気がしたから、ここに書いちゃった。心の中でだけずっとそう思ってると、本当に怖くなってきちゃうから。



自分だって、タンスの中にお気に入りのカシミアストールが何本入っていようが、冬に着るつもりで買った新しい素敵なコートがクローゼットで待ち受けていようが、いざそうなってしまったら、そんなものは何の楔にもならないのかもしれない。そう思うと、こわくてたまらなくなってくる。


・・・ちょっと、これは疲れている感じがするな。


物を処分すると心がスッキリするはずなんだが、普段ものぐさで物の管理を怠っているせいで、何年分もまとめて捨てなきゃならないはめになり、心はともかく体の方がだいぶ疲れてきている。


故人が皆、安らかでありますように。とは言え、本当に思ってもみないことばかりが起きるので、一体なにが安らかでなかったのか、本当に実感もなにもない。このあとまた、大きな喪失感が来るんだろうか。

ねこを撫でまわして寝ます。

1コメント

  • 1000 / 1000

  • tomo♪

    2020.09.28 03:21

    ネコは最高よね。物の処分はパワー使うよね、おつかれさまです。私も、ニットの整理とかもう少しやらねば。最近涼しくなったから、色んなことのやる気が出てきた!足つぼとかも行ってみたいなとか、普段行かないとこもやらないことも、してみたい気分。ゆきちゃん、いろいろ落ち着いたら、付き合ってね♥♥