晩秋

ともちゃんが前の投稿で買ったと言ってるピンクのコート、私は色違いのグレージュを買ったのでした。明日の正午から公式オンラインショップで販売するそうな。

持ってない色〜。いい色〜〜。明るすぎない淡色のコート。適度にふかっと厚みのあるいい生地感。

ともちゃんの買ったピンクも可愛かった。なかなか売り切れないのは、着る人を選ぶからである(ピンクを愛しピンクに愛された女・ともちゃんなら着こなせる)。

今年もそうだけど、ロングコートに関しては、私はバイザラインよりノークの生地感の方が好きかも。バイザラインの方が、去年も今年も軽くて薄い。ので、都会生活には向いてると思うんだけど、表面の質感がすぐによれっとしてきそうというか・・気をつけないと傷みやすそう。

形がよほど好きとかじゃなければ、迷った時の安全パイはノークの方かなという気がする。まあ、来年はわからんけど。

しかし、今回伊勢丹のポップアップ期間は2週間あったんだが。

平日始まりで1週目の初日にこれこれを・・2週目の初日にはウールのコート類を販売開始する・・という感じで結構前から告知していたのに、初日の前夜になって、急に1週目と2週目の販売物を入れ替えたのだ!

しれ〜っとインスタで告知したので、度肝を抜かれたーよ(ヨギータ風に)。

このコートの販売は、本来2週目からの予定で、その日は祝日に当たっていたので余裕でいたのだが。同じように油断してた人、前日に予定が変わって休み取れなかったような人、山ほどいるだろうな・・。下手したら、ポップアップの初日までそのことに気づかなかった人もいるかもしれん。

ひどい話だ。行き損ねた人みんな、明日の販売で買えるといいなあ。


さて、晩秋といえば本格的な衣替えの季節なので、クローゼットを整理しようと頑張ってる。

引越しの時に捨てたり買い取ってもらったりしてだいぶ処分したのだけど、捨てるほど傷んでないけど買い取りには出せない中途半端なものが、結構残っていた。

何年も前のユニクロのカシミヤとか、丈が中途半端なZARAのガウンコートとか。そういうファストファッションのは、ブックオフに持っていけば普通に買い取ってもらえるらしいので、そのうち持って行けばいいやと思ってたのだが。なにぶん出不精なもんで・・・やっと今日行ってきた。

大きめの段ボール箱ひと箱強くらいの量。ユニクロ、ザラの他に、ベイクルーズのノベルティのバッグとかも入れて査定に出したら、2600円くらいになった。

待ち時間の間に店内をウロウロして、買おうと思った本の合計が1500円くらいだったので、それくらいはなるといいな〜と期待していた。よかったよかった。

宮部みゆきの三島屋シリーズ4冊。段ボール箱の衣類に比べたら、だいぶかさが減った。よかった。

そして、一時間ほどの間立ち読みし放題だったので、よく最初の方だけ無料ウェブ連載になってるコミックエッセイみたいな単行本の、結末部分を読みまくってやった。 

離婚してもいいですか?みたいなのとか、夫がいても誰かを好きになっていいですか?みたいなやつ。妻が口をきいてくれないやつも見たな。


読書の秋なのだけど、ちょこちょこ図書館本を読んだ感想をちゃんと書き留めないまま、晩秋に差し掛かっている。一応メモをば。。


まずはこちら。

「メイドの手帖」。Netflixでドラマになってるらしい。

作家を志し、働いて頑張って人より遅れて大学に入学しようとしていた女性が主人公。30手前とかそんななのだが、予定外の出会いによって妊娠・結婚をし、進学を諦めて出産したのはいいが、夫になった人がDVのクズ野郎であったという。。

シングルマザーになり、シェルターに入ったり、生活保護的なものや家賃補助を受けたりして、なんとか自立しようとするのだが、仕事が掃除婦くらいしかなかった。両親は離婚してそれぞれ別の人と結婚し、他の親族との間にも軋轢があり、頼れるところがどこにもない。

貧困の中、娘と二人なんとか暮らしていくために、きついメイドの仕事に耐える筆者・・。これは、大変な本だった。海外の本は訳者との相性もある。だから大体時間がかかることが多いのだが、今回は特に厳しかった。

ヌルヌルのカビや、抜け毛の束のドロドロなんかの描写がいちいちキツすぎるのだ。

読み終わるのに貸出期限目一杯かかった。。吐き気を堪えながら読了。 これはアメリカの話なのだけど、欧米の中流以上の家では、自分で風呂やトイレや水回りの掃除をしないのが普通らしい。ハウスメイドサービスに頼むんだって。気軽に頼めるみたいだけど、その陰には、低賃金に喘ぎながら吐き気を堪えて息を止め、排水口に手を突っ込んでいるメイド達の存在があるということだ。

そもそも、この主人公は掃除婦という仕事に致命的に向いていない。掃除が下手とかそういうことではなくて、いちいちいろんなものに目が向き、思いをめぐらせすぎるのだ。麻痺できない。

清掃という行為を通して、彼女はその家の住人を観察する。汚れ具合や物の配置から敏感に色々感じ取り、主人の人となりや人生の来し方を推察するのだ。その描写があまりにも不躾で、住人側の身になると、プライバシーを土足で踏み荒らされたような気持ちになり、怒りに震える。

でも同時に共感もあって、もし自分が掃除人をせねばならない境遇であったら、きっと同じようにしてしまうだろう(たぶん自分もそっち側の人だ)。

そもそも人に掃除を頼むというのは、そういうことなのだ。頼むならばそれを受け入れなければならないし、侵されたと感じて怒るということは、相手が人であることを認めない、感受性を持たない掃除マシーンであるべきだと言っているのと同じだ。理不尽なことだ。

掃除婦を気軽に頼む習慣のない国で、自分で自分のバスルームの掃除をするのが普通の環境に育って、本当に良かったと思った。誰かにこういう思いをさせるの嫌すぎる。

日本では生活保護に相当するフードスタンプというものが作中に登場する。スーパーで食料品に換えることができるのだが、それをレジで使う際、レジ係が普通にそれとわかる言い方で決済するので、周りに隠せないらしい。当然差別的な目で見られることもある。

自分達の税金で養ってやってるんだ、みたいな言い方をあからさまにする人って、どこの国にもいるんだなあ。懐から財布出して払ってあげたわけでもないのに、なんでそんなに偉そうになれるんだろうか。

彼女は、そのようなストレスにとても敏感な人で、図太くない。生活保護を受ける自分は、だから疲弊しきるまで働きづめでいなくてはならないと思っていて、本を読んだり休んだりしている少しの時間にも、何か悪いことをしているような気持ちになる。

大勢が自分を監視し、援助を与える価値があるかないかを常に査定し、隙あらば裁き、叱責する機会を探していると感じている。きつい仕事に耐え、そんな中で、心通う人達とのわずかな出会いに救われ、書くことに生きがいを見出して、自分と娘をなんとか救い出し、明るい方向に向かおうとする主人公。

読み終わった後、彼女がどうなったのか、今どんな生活をどこで送っているのか検索してしまった。

・・・・しんどかった。本当にしんどい本だった。


で、たまたまだけど、次の本も女性の貧困にちょっと関係する本だった。

無政府主義者、伊藤野枝の生涯を描いた「風よあらしよ」。600Pの長編だけど、読ませる本という感じで、一気に読み終われた。さすが村山由佳。

日本史で絶対通るので、もう結末はわかっている。関東大震災の直後の混乱の中、夫の大杉栄とともに憲兵に捕らえられ、拷問されて絞殺され、井戸に投げ込まれるのだ。。

冒頭部分でもう、捕まる直前。そんでそのあとは、誕生から虐殺に至るまでを時系列に沿って丹念に描いていく体裁。教科書では1行か2行、らいてう創刊の青鞜に関する記述を含めても3行でてくればいいくらいだけど・・いや〜わかりやすくて面白い本だった。

評伝ものによくある、大勢の視点が次々に入れ替わっていく感じで物語は進んでいく。

何もない寒村で、とにかく字を読むのが好きな子供時代に始まり、利かん気でこうと決めたら曲げない少女期を経て、野心満々の青年期へ。親の決めた夫なんて蹴っ飛ばして東京に出て、恋をし、働かない無気力な次の夫は捨て、また恋をする。

激しくて、エネルギーに満ちていて、やりたい放題にやって7人も子ども産むって・・・ノエちゃん、すごいパワフル。(当時の世間の常識を考え合わせると、)どう考えても男側に優位で女側にしたらクソみたいな、自由恋愛とやらいう屁理屈を押し付けられるが(大杉栄マジでそのくだりに関しては超クソ野郎)、妻も愛人も出し抜いて見事にものにした。超いい女なのだ。

でも同性にはあまり好かれないタイプなんだろうな。かつて青鞜で仲間だったはずの女たちには、恋愛しか頭にない、好きになった男の考え方にすぐ感化されるだけの、思想のない女扱い。ろくなこと言われてない。

実際はそうじゃなくて、愛し生活を共にしてても、夫の方が変だと思ったら意見したり幻滅したりする。

自然体だからって思想がないわけじゃなく、男性とは違うやり方で、思想をまるっと体現していただけなのだ。無政府主義者なのだから子供を戸籍登録しないってとこにシビれた。したほうがいろいろ便利に決まってても、主義主張と逆のことをするなんてずるいからしないと。

それが終盤、さすがに7人も産んで、捨てざるをえなかったり養子に出したり、逮捕投獄されてばっかりの夫に振り回されてるうちに、ちょっと体力がなくなったり疲れてきたりしてる。まだ30手前なのにさ・・・。そして、運命のその日がやってくるのだ。

たった100年前の話なんだな。と思った。

女は男の持ち物みたいなもんで、人間扱いあんまりされないし、向学心があっても勉強できないし、性欲があったらいけないし、男なら武勇伝で済むような恋愛の醜聞で人間以下の評価受けるし、挙げ句の果てに言いたいこと言ったら夫と一緒に虐殺されて古井戸行きかよ。

ちょうど衆議院選挙の投票の前後に読み終わったもんだから、先人の女たちに感謝しながら行ったよね、投票所。

・・・で、せっかくなので瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり」も読もうかなと思っているところに訃報が届いた。冷え込んでくるとなあ。


みんな知ってるベストセラー、「村上海賊の娘」。

素晴らしい冒険譚であった。侠気のある女ってすてき。

大まかに言うと瀬戸内と大阪湾を舞台に海賊が戦う話だった(大まかすぎ)。登場人物の半数が泉州弁を話す泉州海賊だったのだが、かなり正確なもので、南大阪出身の自分は海賊のおっさんらの会話を、イントネーションまで正しく脳内で再生できた。

こどもの頃、祭りとか寄り合いとかのとき、泉州のおっちゃんらは常にこんな感じだった。今はどうなのか知らない。もう絶滅したかしら。 

グッと感動させられる、山となる場面が幾つかあるので、映像化したらさぞ盛り上がっていいだろうなと思った。実写はかなり難しそうだけど(景役をできる20代の女優が一人も思い当たらない)、今あるとしたら見取り図の人とかがキャストの端っこに入りそうだ。泉州侍の役だな。

とにかく、泉州弁を正確にしゃべれるかどうかにかかっている。

七五三兵衛は鈴木亮平かな。大男だからな。桐谷健太もいいな。

就英はとにかく顔がいい人だから、町田啓太か大倉忠義!あっでもやっぱり大倉くんは景親がいいな。情けない感じの役が似合うから。どっちも大阪側の人じゃないけど。

いっそ細田守あたりがアニメーションにしてくれるほうが嬉しいなあ。

そういや昔、これを漫画化連載したときに作画を担当した人が近所に住んでいた。このブログにもチラッと書いた気がするな。この作品だったのでした(若者たちがやたら出入りする謎の家の話)。


そして、最後に心からの追悼を。

和歌山の駅ビルで買った本たち(ほぼ)。

中高生の頃、山本文緒が大好きだったの。いつも学生鞄に入ってた。

群青の夜の羽毛布だけない。数年前にカバーが擦り切れて破れたからだな。一番読んでたからしょうがない。 眠れるラプンツェルもない。引越しの時かもしれない。

おそらく私生活に色々あったのと、うつ病のせいだとは思うのだけど、何年も書いてなかったのに、ここ2年くらいの間に復活して大活躍だった。テレビやラジオにも出てて、これからもう一花咲かせてくれるのを楽しみにしていた。

とても悲しい。

いつかみんないってしまうのは知っているが、こんなに早いとは。

一冊500円以下で文庫本が買えた時代、ワンコインを握りしめてレジに並んだ、10代のころを支えてもらった作家。人はみんないじましくて、一皮むいたらちょっと変で、自分にもズルくてイタいところはあるけれど、なんとなく受け入れて生きていったりする。そんなことが愛おしくなる短編がいくつあっただろう。

みんな、意外に狂気と隣り合わせなのが普通なのだ。自分がいつそっち側にいくかなんてわからない。読んでいると、狭く手すりもない一本の橋を、気を付けてフラフラと歩いてるみたいな、危うい気持ちになったものだ。

休み時間や授業中に友人によく貸した思い出がある。だから私の周りの席になった人たちは、みんな山本文緒を好きになったはずだ。


晩秋はせつない。


この辺り(南区っぽい)出身で、今も実家にはご両親がいるらしいので、いつか近くで講演とかやってくれるかもと密かに期待してたんだけど。




せつないから、押しピンはお休みです。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • yuki*

    2021.11.18 15:02

    @tomo♪ピンクコートの出番はもうすぐだよ、きっと。夕方以降のお出かけの時とか、そろそろ必要になってくるよ。去年買ってたバイザラインのコートも、可愛かったから今年もまた軽やかに着てほしい!とにかく色や形が可愛いのは大事である。そしてあの価格帯なのは嬉しいよね。・・・本は、しばらく重たいのはいいかな。。せっかく催しがいろいろとある期間だし、なるべく楽しいことだけ考えて年末まで過ごしたい。そして最近は、本当に本当に大好きなもののことは、心にしまってあまり顔には出さないようにしてるから、年末までは珍しく無口になるかもなあ・・(笑)山本文緒はまたそのうち貸しますよ。
  • tomo♪

    2021.11.18 03:08

    ピンクのコート、全然売れないじゃん!笑 張り切って買いに行ったのに!いや、気に入ってるからいいんだけどさ。もうそろそろ出番が来るかしら? それにしても、本、たくさん読んでるね。さすがだわ。しかも、なかなかに重たそうなやつ。私は普段、ゆきちゃんの読んだ本の感想と解説でだいぶ知識が増えてると思う!世界が広がってありがたいよ♡山本文緒、たぶん昔読んだと思うんだけど、全然思い出せない(だいたいの本が読み終わるとすぐに忘れちゃうんだけど。病気?笑)。また読んでみようかな!